2026年5月、Xがざわつきました。
京都の伏見稲荷大社で、外国人男性が参道の竹にカッターで名前を刻もうとしている動画が拡散されたのです。
この投稿はわずか数日で1600万回以上表示され、「怒り」「心配」「もう知らない…」といったさまざまな声であふれかえりました。
なかでも多くの人が口にしたのが、「お稲荷さんに手を出したらアカン」というある種の、静かな恐れです。
「祟り」という言葉が飛び交い、「稲荷と井戸だけは触れてはいけない」という昔からの教えを持ち出す方も少なくありませんでした。
「日本の神様だから、外国人には効かないんじゃ?」と冷笑する声もあったようですが、そんな軽い話ではないと猫ママは思っています。
なぜなら、「怒らせてはいけない存在」は、日本にだけいるわけではないのです。
「世界の禁忌シリーズ」は、
日本の神仏や禁忌を入り口に、世界各地に伝わる「場所の力」「自然の怒り」「見えない存在への畏れ」を文化として紹介していく連載です。
第1回の今回は、ヨーロッパから始め、太平洋、ハワイ、アジアへと旅するように、世界中の禁忌と言い伝えを見ていきましょう。
そもそも「禁忌(タブー)」とはなにか

「タブー」という言葉は、18世紀に南太平洋を旅したジェームズ・クック船長が、ポリネシアの言葉「tapu(タプ)」を英語に持ち込んだことが起源とされています。
「聖なるもの、触れてはならないもの」という意味です。
世界中の文化を眺めると、禁忌の構造はどこでも驚くほど似ています。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 聖なる場所 物 | 人間が勝手に触れてはならない領域がある |
| 警告 | 昔から「やってはいけない」という伝承が伝わる |
| 結果 | 違反した者には不運・病・死などが訪れるとされる |
| 解決 | 謝罪・お礼・返却・儀式によって許しを得る |
この構造が、国も宗教も超えて共通して存在しているのです。
ヨーロッパ編:妖精の木を切ってはいけない

ヨーロッパというと、科学や理性の文化というイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、大陸の西の端、ケルト文化が根付くアイルランドやスコットランドには、日本の神仏への畏れと驚くほど似た「怒らせてはいけない存在」の言い伝えが今も生きています。
アイルランドとイギリス―「フェアリーツリー」の怒り
ヨーロッパで「聖なる木を傷つけてはならない」という信仰が最も強く残っているのが、アイルランドとイギリスのケルト文化圏です。
その主役は「サンザシ(ホーソン)」という木。
アイルランドでは「フェアリーツリー(妖精の木)」と呼ばれ、妖精の世界とこの世をつなぐ入り口として大切にされてきました。
畑の中に一本だけぽつんと立つサンザシは、「妖精の道」の目印とされます。
農家はどれだけ土地を整備したくても、この木だけは絶対に切りません。「切り倒せば、不運・病・死が訪れる」と何百年もの間語り継がれてきたからです。
この信仰は昔話ではありません。
1999年、アイルランドで高速道路を建設する際、サンザシの木が建設予定地のど真ん中に立っていることがわかりました。
民俗学者が「この木を切れば道路は呪われる」と強く訴え、結果として道路そのものが迂回して作られました。その木は今も変わらず、高速道路のわきに立っています。
さらに有名な話があります。
1980年代にアイルランドでデロリアン(映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で有名な自動車)の工場が建設されたとき、敷地にあったフェアリーツリーが伐採されました。
地元の人々は「必ず不幸が来る」と警告しましたが、工場側は聞き入れませんでした。
その後、会社は経営に失敗し、わずか数年で倒産。アイルランドの人々は「だから言ったのに」と静かに言い合ったそうです。
スコットランド―霊的な場所は今も生きている
イギリス北部のスコットランドにも、「侵してはならない場所」の伝承は数多く残っています。
古代ケルトの石積み遺跡、丘の上の石塚(ケアン)、湖のほとりの泉など、自然の中に点在する場所には「そこに手を加えた者には報いがある」という言い伝えが今なお伝わっています。
スコットランドでは、聖人が祀られた泉のそばには願い事を書いたリボンや布を結ぶ風習があり、「望みのないものが勝手に結ぶと泉が怒る」とも言われます。
そのため、泉に近づく際は祈りを捧げてから行くのがならわしとされてきました。
オーストラリア編:「ごめんなさい岩」が届き続ける場所
伏見稲荷の竹の話と、非常に似た出来事がオーストラリアで起きていることをご存じでしょうか。
オーストラリアのほぼ中心に、「ウルル」と呼ばれる巨大な砂岩の岩山があります。かつては「エアーズロック」という名で知られ、世界的な観光地として多くの旅行者が訪れてきた場所です。
ウルルはオーストラリア先住民アナング族にとって、「ドリームタイム(創造の時代)」に古代の存在が宿った聖なる場所です。岩山に刻まれた文様や洞穴は、彼らの歴史と信仰そのものを意味します。
ところが多くの観光客が、記念として岩の欠片を持ち帰りました。
その後、世界中から「返却の手紙」が届き始めました。
「石を持ち帰ってから交通事故にあった」「結婚生活が壊れた」「ずっと体調が悪い」——そうした内容の手紙とともに、石が郵送で戻ってくるのです。
国立公園には今も毎日、「ごめんなさい岩(sorry rocks)」と呼ばれる返却の包みが届いています。そのうち約四分の一には、「持ち帰ってから不幸が続いた」という書き添えがあるとされます。
アナング族はずっと「石を持ち出さないでほしい」と訴え続けてきました。そして2019年、ウルルへの登頂は正式に禁止されました。
日本では「お稲荷さんの竹を傷つける」ことへの怒りが広がりましたが、世界の裏側でも似たような話が積み重なっていたのです。
ハワイ編:女神ペレの石を持ち帰ってはならない
太平洋の中心に浮かぶハワイ諸島にも、強く語り継がれてきた禁忌があります。
ハワイ島のキラウエア火山は、今なお溶岩を噴き出す活火山です。
ここには火の女神「ペレ」が宿るとされ、火山そのものが女神の体と考えられてきました。溶岩はペレのご神体であり、それを持ち出すことは女神への冒涜とされます。
「溶岩石を持ち帰ると呪われる」という伝承は、ハワイでは常識として知られています。
そしてここでも、オーストラリアと同じように、持ち帰った石を国立公園に返却する人が後を絶ちません。
「持ち帰ってから家族が病気になった」「仕事がうまくいかなくなった」「なんとなく気持ちが悪くて眠れない」——そんな訴えとともに、世界中からハワイへ溶岩石が送り返されてくるのです。
アジア編:「神様の怒り」は国境を越える

日本と同じアジアの国々にも、聖なる場所や存在への深い畏れは根付いています。
信仰の形は国によってさまざまですが、「冒涜した者には必ず報いが来る」という考え方は、言葉の壁を越えて共通しています。
タイ―仏像への不敬は許されない
タイで仏像や寺院へ不敬な行いをすることは、社会的にも霊的にも許されないこととされています。
特に有名なのが、外国人旅行者が仏像と並んで「ふざけたポーズ」で写真を撮ったり、足の裏を仏像に向けたりする行為への厳しい反応です。
タイでは実際にこのような行為をした外国人が逮捕されたケースもあり、「冒涜は神への怒りを招く」という意識が法律の背後にも根付いています。
バンコクのエメラルド寺院(ワット・プラ・ケオ)は、タイ王室が守護する最も格式の高い寺院です。
本堂内での撮影は全面禁止とされており、この場所への敬意の示し方は今も厳格に守られています。
インド―聖人の怒りが城を廃墟にした
インドのラジャスタン州にある「バーンガル砦」は、16世紀に栄えた城砦です。
ある夜を境に住民が全員消えたという伝説が残り、今も夜間は一般人の立ち入りが禁止されています。
伝説によれば、城の建設が近くに暮らす聖人の住まいに影を落としたため、聖人が怒り、呪いをかけたとされます。
現在でも観光地として訪れる人が多い一方で、夜になると全員が退去しなければならないという規則が続いています。
共通していること:世界は「怒らせてはいけない存在」に満ちている

日本、ヨーロッパ、オーストラリア、ハワイ、アジア——場所も宗教も時代も違います。
しかし、どこでも驚くほど同じ「構造」が見えてきます。
| 地域 | 対象 | してはいけないこと |
|---|---|---|
| 日本 | 稲荷・井戸・神木 | 冒涜・傷つける・粗末にする |
| アイルランド | フェアリーツリー | 切る・傷つける |
| オーストラリア | ウルル(聖なる岩山) | 登る・石を持ち帰る |
| ハワイ | 女神ペレの溶岩 | 持ち帰る |
| タイ | 仏像・寺院 | 不敬な行為・写真撮影 |
| インド | 聖人にまつわる場所 | 建設・侵入 |
「祟り」「呪い」「報い」——言葉はそれぞれ違っても、伝えていることは同じです。
「この場所には、人間の理屈を超えた力がある。敬って接しなさい」
それは迷信なのでしょうか。
かもしれません。でも猫ママが思うのは、何千年もかけて語り継がれてきた話には、それだけの理由があるということです。
科学で証明できないことが、嘘だとは限らない。
そして「なんとなく怖い」という感覚は、人類が長い時間をかけて学んできた知恵の形なのかもしれません。
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- Q外国人には日本の神様の祟りは効かないのでしょうか?
- A
断言はできませんが、世界中の言い伝えを見ると「その場所の力は、訪れた人の国籍を問わない」という考え方が共通しています。
ウルルの石を持ち帰って後悔した人も、ハワイの溶岩を返却した人も、さまざまな国の方々です。
「日本の神様だから外国人には関係ない」とは言い切れないのではないかと、猫ママは思っています。
- Q知らずに禁忌を犯してしまった場合はどうすればいいですか?
- A
世界中の禁忌の言い伝えに共通しているのは「誠実に謝り、元に戻す」という解決策です。
ウルルの石を返却した人々も、ハワイの溶岩を送り返した人々も、「ごめんなさい」という気持ちを大切にしていました。
知らなかったことは仕方がありません。気づいた時点で、できる範囲で誠実に対処することが大切だと言われています。
- Q聖地を訪れる前に、何か準備しておくべきことはありますか?
- A
まずその場所の「由来」を少し調べておくことをおすすめします。
何のために建てられた場所なのか、地元の人々がどのような気持ちで守ってきたのかを知るだけで、自然と振る舞いが変わります。
服装のマナー、撮影禁止エリア、持ち込み禁止のものなど、事前に確認できることは確認しておきましょう。
- Q「祟り」は本当に存在すると思いますか?
- A
猫ママ自身は、「信じる・信じない」よりも「敬う・敬わない」の方が大切だと考えています。
科学で証明できないからといって存在しないとは言えないし、逆にすべての不運を祟りのせいにするのも違うと思います。
ただ、何千年も語り継がれてきた話には、それだけの理由があるはず。その重みを受け取る姿勢が、自分自身を守ることにもつながるのではないでしょうか。
- Q子供と一緒に聖地を訪れても大丈夫ですか?
- A
もちろん大丈夫です。
むしろ、子どもと一緒に「この場所にはどんな歴史があるのか」「どうして大切にされているのか」を話しながら訪れることは、とても意味のある体験になります。
世界各地の禁忌や言い伝えも、子どもへの文化教育として伝えていける話題です。大人が敬う姿を見せることが、子どもへの一番のお手本になるでしょう。
まとめ:「知らなかった」では済まない、かもしれない

伏見稲荷の竹に名前を刻もうとした外国人男性は、おそらく悪意はなかったのかもしれません。ただ、「知らなかった」のでしょう。
でも世界中の言い伝えを見ると、「知らなかった」は免責にならないことが多いのです。
木は「切るな」と言葉を発しません。岩は「持ち帰るな」と叫びません。でも、世界中の人々が何千年もかけて「やめなさい」と子どもたちに伝え続けてきた。
その積み重ねは何かを意味しているのではないかと、猫ママは思っています。
次回の「世界の禁忌シリーズ」では、さらに深く各地域の禁忌の背景に迫っていきます。どうぞお楽しみに。
